多民族国家アフガニスタンの知られざる真実【レシャード・カレッド×中田考】第2回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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多民族国家アフガニスタンの知られざる真実【レシャード・カレッド×中田考】第2回

「タリバン復権の真実」と「今、アフガンで生きる民間人の実情」を知りたい。

2012年に中田考氏、内藤正典氏たちによって同志社大学で開催された国際学術交流会議に、タリバン代表団と当時のカルザイ政権の代表が邂逅し、世界で初めて両陣営が同席している姿がメディアに映し出された。中田氏の右隣にいるのがタリバン指導者のひとり、カーリーディーン・ムハンマド師。現タリバン政権の経済大臣になっている。前列右端は当時カルザイ政権時の代表スタネクザイ氏。奇跡の邂逅がこの日本で行われていたのである。

■2012年の日本で、タリバンとカルザイ政権が邂逅した

 

中田2012年に同志社大学で、私どもがホストになって、タリバンおよびカルザイ政権の代表が集まった会議が開かれました。あのとき初めてタリバンがマスコミの前に出てきたわけですね。

 あの時点で話がまとまっていれば、もう少し包括的な、レシャード先生がおっしゃるのに近い制度ができたと思います。先生もご出席されていましたが、あのとき先生はどういうふうに感じられましたか?

 

レシャード:あの時は大変いい機会を作っていただいて本当にありがたかったです。私がその後に書いた本の中でもあの会議については書いています。アフガニスタンの外の世界でタリバンが表に出てきて話ができるというのは大変有意義なことでしたから。

 その後、ちょうど2012年に東京会議(「アフガニスタンに関する東京会合」)がありましたよね。その東京会議のときに、私は日本政府に「タリバンも呼んだらどうだ?」ということを提案したんです。

 日本政府からは、立場上は、「いろいろな国の政府といった承認されている人たちが集まるのであって、承認されていない人たちを呼ぶのは難しい」という話をされました。しかし私は逆に、そうすることによって、お互いに話をできる場を設けることができるのですから、国際社会の中で、そのような人たちと会っていくことは重要だろうと思っています。

 

中田:そうですね。

 

レシャード:同志社大学での会議には私も参加させていただいて、いろいろと話を聞かせていただいきました。実はタリバンがそのときに主張した統一の条件は、後にトランプ政権時のアメリカとの話し合いの中で出てきたのと全く同じ条件だったんです。

「アフガニスタン、あるいは中東にアメリカ・米軍が存在すること自体が、一つの大きな隔たりを作っている。米軍がいる限りは、一つのまとまった政府、まとまった国家はできない。米軍が出ていけば、我々はお互いに話し合って、いろいろな形でまとまることができる」と。

 タリバンは2012年の時点でもこの主張を言ってましたし、2019年からもアメリカ政府との話し合いでその通りに主張しています。

 もうひとつ、その時のカルザイ政権の代表であるスタネクザイ氏は、「自分自身も話し合いを持つことには賛成だ。そういう話し合いができればいい」と言っていましたので、正直言って私は、同志社大学での会議が次のステップに続くかなと期待していたんです。

 1回で終わるのではなくて、それが2回目、3回目と続き、そこに日本の政府がもう少し参加する形になり、間を取り持ってもらえるような第三者的な立場で誰かが加わっていけば、もうちょっと早く結論ができていたのかなという気はしているし、当時そのように期待もしておりました。

 残念ながらそれがどんどんと遅れに遅れて、今の現在になってしまったわけです。

 

中田:同志社大学での会議以降、タリバンは国際会議に出るようになったんですけれども、残念ながらアメリカやヨーロッパの国がやったものは全部失敗していて、結局ロシアとか中国のほうに主導権が移ってしまったので、今の形になってしまっているんです。それはすごく残念だと私も思っています。レシャード先生もやっぱりそう思われますよね。

 

レシャード:はい。全くその通りです。

 

(第3回へつづく)

 

構成:甲斐荘秀生

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    中田考(なかた・こう)
    イスラーム法学者。1960年生まれ。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。83年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。灘中学校、灘高等学校卒。早稲田大学政治経済学部中退。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得、在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、山口大学教育学部助教授、同志社大学神学部教授、日本ムスリム協会理事などを歴任。現在、都内要町のイベントバー「エデン」にて若者の人生相談や最新中東事情、さらには萌え系オタク文学などを講義し、20代の学生から迷える中高年層まで絶大なる支持を得ている。著書に『イスラームの論理』、『イスラーム 生と死と聖戦』、『帝国の復興と啓蒙の未来』、『増補新版 イスラーム法とは何か?』、みんなちがって、みんなダメ 身の程を知る劇薬人生論、『13歳からの世界制服』、『俺の妹がカリフなわけがない!』、『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』など多数。近著の、橋爪大三郎氏との共著『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)がAmazon(中国エリア)売れ筋ランキング第1位(2021.9.20現在)である。

     

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